何も考えずに過ごしていけるのなら
シャボンの中に居るようで
この世界はサーカス小屋
あなた達は手品師の役で私を騙す
人気のない海岸に捨て去られた
袋の中の犬達
彼らが仲間同士喰い合い
その呻き声が聞こえると
あの中に入っていたのは
犬だけではないのかと思えてしまう
川は鉄の色のように染まり
空には黒い塵が舞う
模造真珠のような女性たちの間を
縫って歩いていくと
そこは人々が辿り着く
空虚な地だった
1980年4月4日発行
同人誌「投射」二十九号に投稿